エジプト 治安について率直に言うと、滞在する地域によって全く異なります。答え方も、単なる「大丈夫です」とは異なり、政府の地域別の旅行アドバイスの内容が参考となります。エジプトの場合はエリア分けがかなり明確です。北シナイは渡航不可、国境地帯は最新情報を確認、カイロ・アレクサンドリア・ナイル川流域・オアシス・紅海沿岸は、特別な制限ではなく、一般的な注意で十分とされています。
これは観光促進ではありません。エジプトには毎年多くの人が訪れますが、トラブルの大半は「暖かく・混雑し・異なる文化の地」ならどこでも起こる、交通・暑さ・脱水症状・お腹の不調・しつこい客引きなどです。これらへの備えも重要ですので、本ガイドでも例外的なリスクだけでなく、一般的なトラブルへの対応にも重点を置いています。
警戒線はどこ?
北シナイ(海岸リゾート地帯以北)は、2011年以降の治安悪化以降、最も厳しく渡航不可とされています。警察や治安部隊が頻繁に攻撃を受け、2017年にはビル・アルアベド近郊のモスクで多数が犠牲となりました。一方で、南シナイのリゾート、聖カトリーナ内陸部、主要道路は異なり、観光地として扱われています。
西部砂漠およびリビア・スーダン国境付近も、規模の大きさと警備の困難さから強めの注意が求められています。一方で、ナイル川流域・デルタ・地中海沿岸・紅海地域は通常注意レベルにとどまります。
歴史上の事件と変化したこと
エジプトは過去に観光客を巻き込んだ事件が複数あり、その事実を無視することは解決になりません。1997年ルクソールのデール・エル・バハリ事件(観光客58名・エジプト人4名死亡)で全観光地の警備体制が強化。2004〜2006年にはシナイ半島での爆破事件がタバ・シャルム・ダハブで発生し、多くの観光従事者が犠牲に。2015年にはシャルム・エル・シェイク発の航空機がシナイで墜落し、英国直行便は2019年まで停止されました。
以後、暴力の場所が変わっただけで警戒レベルは維持されています。観光客を狙った事件は止み、反政府勢力は北シナイに集中。ホテル・博物館・空港・遺跡での目に見える警備体制は常態化しています。
実際のトラブルは?
エジプトを経験した人の多くが挙げるトラブルは3つです。まず交通事情。道路は混雑し、運転も大胆なため、長距離は鉄道や手配済み運転手を使い、夜間の砂漠道路は避けてください。
次は暑さ。暑い時期が長く、脱水は気づかぬうちに進みます。こまめな水分補給、午前11時までに遺跡巡りを終え日中は日陰で過ごすことをおすすめします。
最後は胃腸の不調。重病になることは少なく、大体は1日程度の不快感で済みます。活気ある場所で加熱された料理を食べ、水はペットボトルや浄水を利用し、経口補水液も持参すると安心です。
詐欺・客引きと対策
ピラミッド、バザール、著名遺跡などではこれが最も多いトラブルです。「今日は閉館」と案内を申し出る、「勝手にガイド」「強引な売り込み」「ラクダを座らせて料金請求」や、ツアー中の香水・パピルス店、メーターを使わないタクシー等、様々です。
対策は地味でも効果的です。「事前に価格を決める」「公式窓口で購入」「頼んでいない案内は断る」「不要な勧誘にはその場で離れる」。本物のエジプトのもてなしと押し売りは紙一重です。断りきれない・トラブル化しそうなら観光警察が対応してくれます。
女性・一人旅旅行者向けアドバイス
エジプトでは一人旅も一般的で、観光インフラも対応しています。女性の主なトラブルは身体的危険よりしつこい声かけや視線です。対策としては、リゾート以外では控えめな服装、カイロ地下鉄の女性専用車両を利用、タクシーは後部座席か配車アプリ利用、夜間の外出はホテルで送迎を手配、「ノー」とはっきり伝え歩き続けること。同性愛は社会的に認められておらず法律でも追及対象となるため、最新情報を確認し慎重に行動してください。
エジプトは身の危険より料金の上乗せや勧誘に遭遇する可能性の方が高い国です。地域ごとに旅行アドバイスを確認し、交通・暑さ対策や貴重品管理を徹底するなど、ごく一般的な準備が有効です。ホテル入口の厳重なセキュリティも「訪問者を見守る人が多い」ことの裏返しとしてプラスに捉えてください。