SIMカードは1つの役割を持っています。それは、携帯ネットワークがその端末を利用できるか確認することです。eSIMはこの役割はそのままに、届け方が変わりました。従来のように店頭や郵送でカードが手元に届く代わりに、ネットワーク情報がインターネット経由で配信され、端末内に組み込まれたチップに書き込まれます。
eSIMとは
eSIMは「embedded SIM」(組み込み式SIM)の略で、GoogleやSamsungもヘルプページでこの名称を使っています。規格はGSMA(GSM協会)によるもので、変わるのはSIMの役割ではなく、「どのように端末へ組み込まれるか」です。SIMは端末内のセキュアエレメントにダウンロードされ、GSMAは取り外し式カードと同等のセキュリティとしています。
GSMAのドキュメントでは、このチップはembedded UICC、略してeUICC(UICCはSIMカードの標準名称)と呼ばれています。ダウンロードされるのは“プロファイル”(1回線分のサービスを利用するために必要な情報やアプリケーション)です。このチップにはEIDと呼ばれる固有の識別番号が割り当てられ、eSIM設定時に通信事業者から求められることがあります。iPhoneでは「設定→一般→情報」、Pixelでは「端末情報→SIMステータス」に表示されます。
eSIMの仕組み:コードから接続まで
eSIMをインストールする際は、4つの要素が関係します。チップはプロファイルを格納し、本体のソフトウェア(GSMAではローカルプロファイルアシスタントと呼ばれる)がインストール作業を行います。サーバー(SM-DP+)がプロファイルの準備と送信を担い、QRコード内のテキスト=アクティベーションコードがどのサーバーにアクセスし、どのプロファイルを取得するか機器に伝達します。
コードを読み取るか入力すると、端末はそのサーバーに対しセキュアな接続を確立します。この際、サーバーとチップは互いの証明書を確認し、サーバー側はその端末がプロファイル取得対象であるかをチェックします。続いて、プロファイルをそのチップ専用に暗号化し送信するため、他の端末でインストールできない仕組みです。受信したプロファイルは無効化された状態で保存され、端末側で有効化の操作ができます。GSMAはこうした流れをSGP.21アーキテクチャ仕様で詳述しています。
QRコードは複数ある導入方法のひとつです。Appleでは、従来のiPhoneからのeSIMクイック転送、通信事業者によるアクティベーション、キャリアリンク、キャリアアプリ、手入力なども案内しています。どの方法であれ、結果は同じです。Appleは、問題解決目的でキャリア指示なくeSIMを削除することを避けるよう案内しており、削除した場合は新しいeSIMが必要です。eSIM QRコードの中身ではコードの詳細も解説しています。
端末に保存できるeSIM数
規格上は固定数が設けられていません。GSMAのSGP.22技術仕様では、メモリ容量に応じて複数のプロファイル保存が可能とされます。アーキテクチャv2では一度に一つのプロファイルのみ有効にできますが、2023年12月公開のv3.1では一つのチップで複数プロファイル同時稼働(Multiple Enabled Profiles)が可能とされています。各メーカーがこれを基に自社端末ごとに具体的な上限を設定しています。
| 機種 | 保存可能なeSIM数 | 同時利用できる回線 |
|---|---|---|
| iPhone XS、XR以降 | 8件以上 | 2件(nano-SIM+eSIM、またはiPhone 13以降はeSIM2件) |
| Google Pixel | 複数 | Pixel 3a以降はSIMカード+eSIM、Pixel 7以降は(事業者対応時)eSIM2件同時可 |
| Samsung Galaxy | 最大20件(プロファイルが大きい場合は少なくなる) | 2件(対応モデルはeSIM2件も可) |
「2回線同時利用」はデータ通信が2本同時という意味ではありません。Appleでは、iPhoneは常に1回線のみデータ通信を行い、Pixelもデフォルト回線のみがデータ通信に使われます。他方は通話とSMS受信待ちとなります。
eSIMに対応する端末
Apple公式リストによれば、iPhone XS、XS Max、XR以降(中国本土除く全モデル)がeSIM対応です。中国本土ではiPhone 18 Pro、18 Pro Max、17e、iPhone Airのみ対応しています。Google PixelはPixel 4以降、Pixel 3・3aは購入地域・通信事業者に依存します。SamsungはGalaxy S20以降のSシリーズ全モデル、初代Fold・Z Flipからのフォルダブル端末、S23 FE以降のFEモデル、Aシリーズの一部モデルが公式に案内され、購入国によっては非対応もあります。
最新の一部スマートフォンはeSIM専用となっています。iPhone Airは全世界でSIMトレイがなく、iPhone 17シリーズおよびiPhone 18 Pro米国(グアム・米領バージン諸島含む)、カナダ、メキシコ、日本、湾岸6か国購入モデル、米国で販売されたiPhone 14、15、16シリーズでもSIMトレイがありません。Google Pixel 10、10 Pro、10 Pro XLも米国ではeSIM専用です。
共通して注意したいのは、端末がキャリアロックされている場合は他社eSIMを利用できないことです。当サイトの対応端末ページでは対応機種リストや簡易チェック方法をまとめています。
eSIMの簡単な歴史
GSMA Intelligenceによれば、2025年後半の2つの出来事(AppleのeSIM専用端末が世界展開、中国でもスマートフォン向けeSIM提供開始)がeSIM普及を加速させました。2030年にはスマートフォン用eSIM接続数が取り外し式SIMを上回る予測です。
旅行時にeSIMで変わること
実用面で変わるのはタイミングです。プロファイルはインターネット越しにダウンロードするため、Appleが推奨するWi-Fiやホットスポットに接続し、自宅で旅行用eSIMを購入・設定できます。到着時に受け取るものや差し替えるカードはありません。
元の回線はそのまま維持されます。旅行用eSIMは新たな回線として追加され、Apple公式例では「自宅の電話番号用eSIMと渡航先用eSIMを分けて使う」ことも可能とされています。旅行先回線のみ利用する場合でも、iMessageやFaceTimeは自宅番号に紐付きます。iOS 26以降では、新eSIMが国内用か旅行用かの選択肢が表示され、帰国時には旅行回線の自動OFFも可能です。
2回線利用でも、元回線のローミングは止まりません。Appleでは、両方の回線が有効時、国内回線に国際ローミング料金が請求される場合があると注意喚起しています。EU域内の「ローミング無料」規定はEU、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、モルドバ、ウクライナまでで、当社販売の3カ国は対象外です。データローミングの仕組みで詳細解説しています。
BaobabSIMのプランもこの仕組みに沿っています。モロッコeSIMはOrange Marocのネットワーク上で使うため電話は現地番号として接続され、ローミングにはなりません。エジプトと南アフリカ向けプランはアフリカ地域用プランで提携ネットワークのローミングになりますので、eSIM回線の「データローミング」を有効にしてください。いずれもデータ通信専用で、通話・SMSは元のSIMでのみ利用可能です。WhatsAppはデータ通信でそのまま使えます。